感動が大きい治療法です
内観は根治療法
内観療法とは(2)心が病気になるしくみでお話したように、以下二つの原因をなくすことが心の治療ですが、内観はまさにそのために行っていきます。
- 心の病気の原因
- 心に膨大に溜めてしまった、マイナス感情(淋しさ、悲しみ、怒り など)
- 苛酷な経験により作られた、ゆがんだ認知(私は愛される資格がない など)
パワーアップした認知療法
認知療法と内観は「間違った思い込み」を修正し心を健康にするという治療の考え方がそっくりですが、認知の修正が範囲にも深さにも徹底しているため、大きな感動があることが内観の最大の特徴であり長所と思います。
この感動があるから人生観が急激に変わり、号泣する人が出たり、アル中が断酒に成功したりするんですね。
なぜそんなことが可能なのか。その秘密は内観の3つの質問にあります。
内観の3つの質問の意味
して頂いたこと(お世話になったこと)
して返したこと
迷惑をかけたこと
内観で1日中繰り返し調べる(記憶を思い起こす)質問ですが、これは人間の本能と真逆になっているのです。仕組みは単純ですが、その効果は深いものです。
人間の本能
—http://www.squidoo.com/b-g-sharma
パセーナディ王
「そなたには、自分よりももっと愛しい人が、誰かいるかね」
マッリカー王妃
「大王様、わたくしには、自分よりももっと愛しい人はおりません。
あなたにとっても、ご自分よりももっと愛しい人がおられますか?」
パセーナディ王
「マッリカーよ、わたしにとっても、自分よりもさらに愛しい他の人は存在しない」」
作者:中村 元(訳)
出版社:岩波書店
発売日: 1986/8/18
メディア:文庫本
人は皆かけられた迷惑を覚えているプロ※
真反対の思考を強いる質問
人間は誰もが本音は自分が世界で一番可愛い存在だと思っています。
そのため、自分がされて嫌だったことや悲しかったことは絶対に忘れず心深くにしっかり刻み覚えていますが、それに比べ自分が他者に迷惑をかけている存在であることに気づくことはまったく少なくなりがちです。
内観はこの人間の性質を利用して、脳にふだんと真反対の力をかけ、思い込みを修正しようとする試みです。この質問の答えを探すことが、ふだんの思考回路と真反対の思考をすることになるからです。
して頂いたこと(お世話になったこと)
して返したこと
迷惑をかけたこと
※この例えは白金台の本山先生に教わり、内観して見れば本当に納得でした。
真反対思考の結果
盲点が見つかる
すると当然自分の思い違いや忘れていたことが甦りますが、養育者をはじめ身近な人間関係を検証することで気づく認知の歪みは、多くが自分が愛されていたことの発見になります。
して頂いたこと(お世話になったこと)⇒思っていたより多くあった
して返したこと⇒意外と少なかった
迷惑をかけたこと⇒実は山のようにあった(繰り返すと、だんだん出てきます…)
すごい勘違いに気づくほど◎
その過程でその人にとって重大な認知の修正があれば、その衝撃で強い感動が起こり、それが深い心の治療効果をもたらします。
父は持っているものを全部、惜しみなく私にくれていたと気づいた私のように…。
1週間の時間をかける意味
ある程度の時間、集中が必要
時間をかけることには意味があると思います。
初めての人は必ず1週間とって内観することになりますが、1週間かけてこの質問の答えを探すこと自体、かなり非日常的ですよね。
朝6:00~夜21:00まで集中的に思い出すということは、単純に考えても1日15時間です。他の事をしないでそれだけに使う時間と思えば、結構な量です。
忘れていた事を思い出すための必要最低時間
最低一週間かけると、それまで思い出せなかった事実を思い出したり、気づかなかったことが出てきやすいので、わざわざこれだけ時間を使うのだと思われます。
愛情を感じる脳のしくみ
愛されていたことに気がつける
白金台内観研修所の本山先生によれば、脳は本当に起こった事とイメージしたことを区別できないそうです。
つまり現実には小さい子どもに戻って母や父に甘えることはもうできなくても、内観で記憶を呼び起こす過程で出てきたうれしい、ありがたい等の感情は、現実に母や父から愛されたのと全く同じ効果が得られるということです。
(孤児院の赤ちゃんがスキンシップで健康になった話を思い出してください)
子どもに戻って、生き直せる
自分の内観を思い出しても本当だったと思います。2回目の集中内観で父とのことを思い出した時は、小学校に上がる前の自分に戻っていました。若かった当時の父は、なつかしい服を着ていました。これらを感じていた時、かなりリアルでした。
そういうことがきっと、体験してみれば誰にもあると思います。
溜まったマイナス感情が溶ける
心って、憎しみとか悲しみを無くしたいと思ったら真反対の感情を強く感じることが一番なんですよ。「愛されていた、嬉しい!!」とか、「ありがとう!!」とか。
心から強くそう思う程、溜めてしまったマイナス感情が溶かされて、消えていくんです。
心が癒され、治っていく
—http://hdw.eweb4.com/out/152853.html
号泣は珍しくない
突然ですが、あなたは誰かにもらった愛情に感動し号泣した経験はありますか。少なくとも私は34才まで一度もありませんでした。
嬉しくてありがたくて涙が止まらない…日常ありえない意識状態だと思いますが、内観は、真剣にやれば誰にでもそういうインパクトのある経験ができます。体験してみないと心からは信じられないと思いますが、事実です。
人間の記憶はいい加減
内観したら、いま覚えてもいないことを思い出すので、いま思ってもみなかった気持ちになるかもしれない、という位に捉えてもらえればいいかもしれません。
愛情で心の傷がふさがれる
泣いた後、疲れとともにスッキリしたことはありませんか。
感情は感じ終わると消えていきます。悲しかったのにちゃんと悲しまなかったり、怒っていたのに見て見ぬふりをしていたり。そういう自分の中につかえていた感情が、全部外に出てしまえば、かなりスッキリします。
その上「してもらったこと」を思い出し愛情を感じるので、心が本当に癒されていきます。
真剣さが成否の決め手
いま生きているのは、誰かが世話をしてくれたから
誰かを憎んでいる間は、その人のいいところは本当に見えづらいですが、赤ちゃんは何もできない存在です。いま自分が生きていることを普通に考えれば、憎んでいた親(や養育者)に、してもらったことは必ず何かあるはずなんですね。
真剣にやらないと、もったいない
そうやって腰を据えて調べてみれば、忘れていた事は必ず出てきます。もっとも私の場合、初回はそこまでに至らず、縁あって約2年後に2度目の集中内観をしてようやくその事実にたどり着きました。
(しっかり調べなかったので1回目の内観体験では、感動は全くありませんでした。当然心の治療もそれなりの結果でした。。)
他人ではなく自分を調べる覚悟で
そのように恨みや怒りが強すぎると、内観にしっかり取り組めない可能性は高いです。
なので怒りや恨みを持ちつつ内観する場合、もし誰かに怒りが出てきてもそれには深入りせず、自分のことを調べるぞと覚悟して取り組んで下さい。せっかくの貴重な1週間ですから。。
ここまでのまとめ
- 時間をかけ過去を振り返るのは、忘れていた深い部分の記憶に気づくため
- 人間の認知システムは不満に偏りがちのため、認知修正後は必ず満足方向
- 記憶の中で、止まってしまった子ども時代をやり直せる
- 腰を据えて取り組めば、重要なことは必ず出てくる
内観療法とは(4)まとめに続く