藤川和尚さんのこと(2)学び(後) 女性の駆け込み寺「サンガ天城」体験

サンガ天城 戸澤宗充庵主さまに会う

和尚と出会って1年位、そんな付き合いが続きましたが、この頃に思うところあり、だんだん和尚とは疎遠になって行きました。

私はヴィパッサナー瞑想インストラクターの地橋先生の本に感動し、本格的にヴィパッサナー瞑想を教えてもらえる場所があると知り、現在まで続けている新宿の朝日カルチャーセンターの「ブッダの瞑想法」講座を受講し始めます。

そんな中、久しぶりに藤川和尚が静岡で瞑想会をすると聞き、そこにすごい尼さんがいるというので興味がわき、静岡まで足を延ばしました。

この尼さんが、現在もDV被害などに苦しむ女性のための駆け込み寺「サンガ天城」を運営されている庵主の戸澤宗充尼でした。—日蓮CHより

 

駆け込み寺へ

瞑想会自体は庵主の長男でお坊さんのどろさんのお寺で行われ、瞑想が終わり庵主さまのサンガ天城に皆で遊びに行くことになりました。

そこまでは車で夜の山道を1時間もかかったでしょうか。運転をしてくれたのは天城に入所している方々でした。(いま思うと、本に出てきた人が何人かいました)

天城では皆さんに暖かいもてなしを受け、やさしさに本当に感動しました。また噂通り庵主さまの人柄も稀に見る慈悲深いものでした。

サンガ天城は老後世界一周するためのお金を全部入れて作ってしまったとのことでした。このような方の存在と、いただいたご縁は本当にありがたい事だと思います。

やさしい人達

—食事風景 本当にこんな感じだった^^

この日は特別との事でビールを開けてくれ、お寺を出る人のパーティも一緒に行われました。手作りのおかずがたくさん並べられ、本当に心がこもった感じが嬉しかったものです。

出寺する人の話を聞くともなしに聞いていると、水商売のお店を経営していたけどうまくいかなかったとか、新しい仕事がラブホテルの掃除だとか、そういう現実でした。

人の痛みが解る人同士がお互いを受け容れあっていたことが心に残りました。ここ居心地いいな、と単純に思いました。

温泉に先に入れていただき、思わず長湯をしてご迷惑をかける程くつろぎ、同行のNさんと一緒に布団を並べて眠りました。

心の中では駆け込み寺の存在とその内実に、驚き続けていました。藤川和尚もそうでしたが、信仰と人生が一体となっている人に実際に会うと、本当にインパクトがあります。

本当の幸せ

なぜ、人はある時から社会貢献的な生き方に目覚めるのか。なぜ人はこのようになれるのか。なぜ信じるものがある人は強いのか。…なぜ、信仰で人間が救われるのか。

私自身は和尚に会った時から、そういう問いを無意識にずっと反芻していたと思います。それは、今も続いています。

この時も、信仰の力を感じずにいられませんでした。

思えば和尚も、庵主様も、どろさんも、実家がお寺ではなく、在家から人生苦を経て仏教に救いを見出された方々でした。

この人達は坊さん、尼さんになった動機がそもそも「実家がお寺で仕方なく」ではないわけで、そういう人の信心や行動力には、たいてい、このように圧倒される迫力があります。

私はなぜか、ド信心を持っている人に無性にひかれる自分に気がついていました。なぜかは解らないけど何かすごく羨ましいというか、そういう気がしてくるのです。

この心、この境地、お金では買えない。なりたいと思ってなれるものではない。最大の幸せではないかと思えてならなかったからかもしれません。

今でもそう思っています。今まで出会った人の中で、この人達ほど幸せな人はいない様な気がします。

慈悲

スコーレインタビュー 一人で悩まないでここへいらっしゃいより

帰路、東京へ行く庵主さまとご一緒することになりました。切符売り場で庵主さまは私の分まで買おうとしているのです。事情のある女性と共に行動し慣れていたのでしょう。

慌てて断り切符を買いましたが、嘘のない慈悲を感じ涙がだらだら出てきました。人にやさしくする時、そのそぶりに恩着せがましさや押しつけがましさが少しもないのです。

「本当にやさしい人」っているんだ、という驚きを経験しました。慈悲…。その純度の高さというか、その印象は、ちょっと感じた事のないものでした。

諭し

新幹線の中で東京まで、色々な話をしました。当時の私は和尚の言動に違和感を感じており、それらについて、誰にもぶつけられなかった思いを聞いていただきました。一渡り私の話を聞いてくれた庵主さまはこうおっしゃるのです。

うらを見せ おもてを見せて 散る紅葉

人間には表も裏もある。表しか知らなかったあなたが、裏のように思える部分を知って失望してしまった。でも人間はどちらもあるもの。その人の表側も裏側も知って、それでもいいと思えば付き合っていくべきでしょう。というものでした。

誠にその通りでした。

今思うと、勝手に人に理想を押しつけ、勝手に失望していた私なのですが、そのやりとりを契機に私は和尚と距離を置くことになります。

しかし和尚から離れても瞑想は続けていましたし、仏教への関心も深まる一方でした。

(本句の解釈は様々で、良寛さんを看病していた若き貞信尼にいい所も悪い所も見せてきたから思い残すことはない、というものや、苦しい時は苦しいように、よい時はよいように、どちらも一体でありのままの自然、などがあります)

あなたが生きている理由―平成の駆け込み寺人生相談
作者:戸澤 宗充
出版社:家の光協会
発売日: 2007/08
メディア:単行本