2回目 体験後(2)

宇宙飛行士のことば

思わぬ共通体験

結局、一番自分の体験についてのヒントが得られたのは、作家・ジャーナリストの立花隆が書いた「宇宙からの帰還」(中公文庫)でした。

会社の人にすすめられ読んだところ、宇宙飛行士の宇宙体験時の心境が2回目の内観で感じたこととそっくりだったのです。

リラックスして人生を生きるようになった。世の中に対して、自分の存在を証明してやろうなどとは思わなくなった。自分のエネルギーを外に向けるより、内側に向けるようになった。家庭とか家族とか、自分の内的精神状態とか、そういうものを第一義的に考えるようになった。(ドン・アイズリ アポロ7号)

それは不思議な体験だった。宗教学でいう神秘体験とはこういう事かと思った。心理学でいうピーク体験だ。詩的に表現すれば、神の顏にこの手で触れたという感じだ。とにかく、瞬間的に真理を把握したという思いだった。

個別的生命は全体の部分である。個別的生命が部分をなしている全体がある。すべては一体である。一体である全体は、完璧であり、秩序づけられており、調和しており、愛に満ちている。この全体の中で、人間は神と一体だ。(中略)

こういう事が一瞬にしてわかり、私はたとえようもない幸福感に満たされた。それは至福の瞬間だった。神との一体感を味わっていた。

より正確に言えば、いまことばであれこれ説明しているように、論理的に真理を把握したわけではない。ことばでは表現できないが、とにかくわかった、真理が解ったという喜びに包まれていた。(エド・ミッチェル アポロ14号)

それを語るのは非常に難しい。それは本質的に語って人に伝えることができないような体験。語ること自体がそれを台なしにしてしまう恐れが強い体験。 偉大な作家でもない限り、とうてい真の意味では語ることが不可能なような性質の体験なのだ。

しかし一方で、この体験は、ぜひとも全人類にわかちあってもらいたいと願うような体験でもある。願うというよりは、私はそれが義務だと思っている。(ラッセル・シュワイカート アポロ9号)

そっくりだった

宇宙飛行士たちの証言を読んでいると、自分が内観中に幼い子どもに戻って父と喜んでいたことを、思い出した途端に経験した不思議な精神状態にそっくりで驚きました。

これらの体験への立花氏の考察は納得のいくものでした。

私は、彼がデタラメを述べているとは思わない。実は、彼のような体験は、宗教史上ではさして珍しいことではない。神、あるいは神的霊的存在との直接的な合一あるいは交感を体験したという報告は無数にある。

キリスト教だけではなく、あらゆる宗教においてある。それは一般に神秘体験と呼ばれ、神秘体験を重視する人々は神秘主義者と呼ばれる。(中略)

ウィリアム・ジェームズは神秘体験には共通の特徴があるとして、まずその表現不可能性、伝達不可能性をあげている。

彼があげるもう一つの共通特徴は、それが日常的な知性、理性をもってしてはとうてい得ることができない真理の深みを洞察した状態だということだ。(第三章 神との邂逅)

神秘体験

私は2回目の内観で体験した意識状態は、たぶん立花氏が文中で解説したように、古来神秘体験と言われた精神状態に近いものであったのだろうと思っています。

その至福の喜びや幸福感、自分が自分のままで意味ある存在であり、この世と調和しているという直観、なぜかそれが真実だという感覚が本当に共通していると感じました。

誰でも観られる世界

しかし特別な能力は必要でなく、状況さえ整えば、誰でも体験できる世界だという冷静な思いもその時からずっとありました。宇宙飛行士たちが言うとおり、彼らが特別なのではなく、環境として宇宙に行けば多くの人間がそうなるというものだからです。

真っ白な光に入り重力や身体の感覚がフッと無くなった時、その光が生きている事の本質なのかもしれない、と感じました。

普段は気づけなくても、生きている人には誰にでもこの光を見る能力がある。(誰の中にもこの光があるから)昔の人は、この光を仏性と言った。

本当に皆が仏なんだと、今の私は体験したので疑いようもないのです。

小さい自我が無くなる喜び

つまり根気強く内観していれば、(この体験では、父の深い愛情に気づいただけでそうなってしまったので、内観ともいえないのですが)たぶん誰でも、その人にとって重大な事実に気づくところまでは達する。

そこまで行けば、それまでの人生で自分で作り出していた思い込み(認知の歪み)は壊され、喜びが自分の内部から、あふれるように噴き出すことになる。

だからそこへ到達するまでは内観を止めてはもったいない、そう強く感じました。

父の愛情と、それを喜ぶ幼い子どもの頃の記憶が、このような体験になって現れたという事実は死ぬまで私の中に残り、私を深い所から支えてくれるだろうと思います。

3回目 体験前に続く

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